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コロナのまとめ 2021年1月14日

コロナのことをスタッフや患者様に正しく理解してもらおうと思い、できるだけわかりやすく、かつ、誤りがないようにまとめてみました。

コロナ禍はいつ終わるのか?

ウイルス感染拡大は集団免疫ができた時に終息します。ウイルスは人の体(生体)の中でしか増えることができないので、人の体の中にウイルスを駆除する免疫があると増えることができません。このような「免疫を持った人の数」が「ウイルス感染した人が新たにそのウイルスをうつす人の数(再生産数)」を上回れば、ウイルスは増える場所を失い感染の拡大は終わります。

具体的には、感染を終息させるための集団免疫の数は、人口X(1-1/再生産数)で求めることができ、日本の状況を当てはめてみると

感染を終息させるための集団免疫の数=120,000,000X(1-1/2.5)=72,000,000と算出されます。

*再生産数は西浦博先生の2.5を採用しています。

つまり、7200万人の日本人が感染すれば、コロナ感染拡大は終わるということになります。しかし、7200万人の感染者が出るということは現在の致死率からすると140万人が死亡するということであり、つまり、インフルエンザ年間死亡者1万人の140年分が死に至るということです。また、対応病床数を超えないペースで感染者を増やし7200万人に達するには、現在のコロナ感染者の累計は30万人ですから240年かかることになります。これらのことから自然感染によって集団免疫を獲得することは現実的でないということがわかります。つまり、今私達は感染者数を最小限に抑える社会政策を実行ながら、効果のある治療薬を模索しつつ、安全なワクチンの完成を待つしかないわけです。

ワクチンとは?

ワクチンとは、病原体からつくられた抗原を人の体に投与することで人の体の中にその病原体に抵抗する免疫系の反応をつくる予防治療のことで、伝統的なワクチンは、生ワクチン(病原体を弱毒化したもの)、不活化ワクチン(病原体をホルマリンなどで増えないよう精製したもの)、成分ワクチン(病原体の免疫系を反応させる一部を抽出し増やしたもの)の3種類に分類され、不活化ワクチンが一般的と言えるかもしれません。

最近摂取が始まったワクチンは核酸ワクチンといって、従来のような病原体そのものやその一部を使って精製したワクチンではなく病原体の遺伝子情報を人工的につくったものです。ワクチンというよりも遺伝子治療とした方が正確な表現かと個人的には思います。実験レベルでは実証されていた技術ですが人体に適用できるのは何十年も先になるだろうと言われていた技術です。理論的には安全であるはずですが人工の遺伝子情報を人の体の中に打ち込み人の体の中で増幅させて人の免疫系を反応させるわけですから、人の寿命中あるいは子孫に何が起こるかは全く予測できません。核酸ワクチンというのはそういうものです。

ワクチンの効果は打ってみないとわからない。

ワクチンは治療薬ではなく人の体の免疫系の反応を呼び起こそうするものですから、その効果は打ってみないとわからないという性質があります。免疫系の反応は複雑で予測することが難しいためです。免疫は、自然免疫(不特定の異物を攻撃、マクロファージ、サイトカインなど)と獲得免疫(特定の標的を攻撃)に大別され、獲得免疫には、液性免疫(細胞外の病原体を攻撃、抗体、補体など)と細胞免疫(病原体に感染した細胞を攻撃、B細胞、T細胞)があります。

私達はワクチンを摂取するとその効果を知るために抗体価(数)を測定しますが、これは、上記の免疫系のうち液性免疫(抗体)だけが定量でき(数値であらわすことができ)、その他の免疫は定量できないためです。そして免疫力は各々の免疫が複雑に関係し合って(クロストークして)効果を出すものなので、抗体価と免疫力とは比例せず、また、因果関係もありません。しかも免疫系のレパートリー(レパトア)は1無量大数(1の68乗)レベルでそれぞれの担当(カウンターパート)の割合も不明なので、打ってみないとわからないわけです。更に呼吸器感染症に対するワクチンの効果成績は良くないことが知られていて、例えばインフルエンザのワクチンの感染予防効果は3割程度と言われています。これは、抗体(液性免疫)は血液中にあるため、呼吸器感染症ウイルスのように気道粘膜の表層で増殖するものに対してはワクチンの効果が及ばないためであろうと考えられていますが確かではありません。ただ、ウイルスが血中に入り込むと抗体(液性免疫)が効くはずなので重症化は防ぐことができるとも言われています。そしてこれらは伝統的なワクチンの話です。現在摂取がはじまった核酸ワクチンの人体における効果や副反応のデータはゼロです。そもそもワクチンというものは最後の砦のような存在なので人体投与までは長い歳月の研究が必要とされます。ワクチンが失敗すれば人類は感染症に太刀打ちできないどころかすべての感染症に対するワクチン予防への信頼を失い感染症に対して絶望することになります。故にワクチン治療は絶対に失敗が許されない手段なわけですが、今回人類は経験のない壮大な人体実験をすることを選んだということになります。

日本人がとるべき最善策は、感染者数を最小限に抑えながら、効果のある治療薬と安全なワクチンの完成を待つしかない。

つまるところ、私達一人ひとりができることは、コロナ感染者数を対応病床数を超えないようにコントロールしながら、効果のある治療薬とワクチンの完成を待つしかないわけです。伝統的な不活化ワクチンが日本のシオノギ製薬で開発されていて今年の夏頃に目処がつくと言われています。非常に不謹慎な考え方ですが、最善策は、世界中で核酸ワクチンの副反応や重症に対する治療薬の知見が蓄えられ安全な予防と治療が受けらる状態になるまでは呼吸器感染症予防のゴールデンスタンダードを徹底し感染しないようにすることかもしれません。(個人的には、感染拡大状況によっては未知の方法を受け入れるリスク負っても効果を獲りにいくという判断は必要ですが、現在の日本は、世界中で感染と戦った方々が与えてくださった知見の蓄積を待ち活用できる状況にあり、そうすることが人類のためでもあると考えるようにしています。)

コロナ(呼吸器感染症)予防のゴールデンスタンダード

呼吸器感染症の予防には次のことが有効であることが広く知られています。

自分を守るためのため予防策としては、1睡眠と栄養をしっかり摂ること、2体を冷やさないこと、3喉を乾燥させないこと(加湿、睡眠中を含めたマスクの着用)です。お互いを守るための感染対策としては、1ユニバーサルマスキング(マスクを着用して飛沫しない、させない。)、2手指衛生(飛沫を伝搬しない。)、3換気(飛沫を残存させない、濃縮させない。)、4ソーシャルディスタンシング(飛沫を浴びない、浴びさせない。)、5体調不良時に外出しないこと、6体調不良者と会わないこと、7早寝早起き(免疫系の反応が低下する時間帯に行動しない。)です。

PCR検査について

PCR(Polymerase chain reaction)検査とは、人の体から検体を取り出して、ウイルスを増やす薬を使い、ウイルスの存在を調べる方法で、検査の感度(陽性を要請と診断する確率)は70%、特異度(陰性を陰性と診断する確率)は99%ですから、感染者が少ない母集団においては検査を増やせば偽陽性者数が実際の感染者数を上回り、偽陽性者の隔離治療で本来必要のない医療資源を浪費することになりかねません。複数回検査によって診断精度が上がるわけではなく(同じ人でする複数回検査はそれぞれが独立しているとは言えないため。)、感染から発症までの間の感度も低いので、現状の日本においては、全員検査によって不顕性感染をあぶりだし感染対策効果を図ることは望めません。インフルエンザ同様に医師の臨床診断(症状や病歴と合わせた診断)が最も効果的と考えられます。因みに、実験レベルで用いるPCR検査は、存在するであろう遺伝子の機能の有無を確かめる一手段で、PCRによって遺伝子の有無が確認された場合は、その遺伝子が持つであろう機能の有無を合わせて証明することが必要になります。つまり、コロナのPCR検査で言えば、PCRでコロナの存在があったとしてもそのコロナウイルスが症状を起こすウイルスであるかはわからないので、そういった意味でも医師の臨床診断が有効なわけです。

 3密回避と外出自粛の妥当性

以上のようなコロナウイルス感染拡大の終息までの経緯を考えると、尾身茂先生が提唱した3密回避や外出自粛は、あまりにも地味で効果を疑ってしまうかもしれませんが、実はその背景には莫大な医学的知識と数理モデリングデータがあり、かつ、科学的不確定要素を断定せずに丁寧に回避しながらつくられ、一般の方が実行できる唯一の呼吸器感染症予防の具体策であったということがわかります。それは実際にインフルエンザが激減したことで実証されたと言っても良いかもしれません。例年のインフルエンザによる死亡者1万人に対して今季の同死亡者は70人です。これにコロナ死亡者3700人を足しても、今季の呼吸器感染症の死亡者は4割以下になったわけです。

経済を回すということ

病気は確立論です。なるときはなるし、ならないときはなりません。そして病気になった人に罪はありませんし人は常に自由であるべきです。しかし現在の状況においては、自身が感染に気付かずに外出したことによって人を殺す可能性があるということですから、不要不急の外出や飛沫するような行動は慎むべきかと思います。

「自分が感染して集団免疫になる。」や「苦しい業界を救うため敢えて外食する。」と豪語する人を散見しますが、集団免疫については前途の通り自然感染では成立しませんし、外食をする程度では経済は回りません。エンドユーザーと接客する仕事が7割なのに対して、その7割の人が回す経済は全体の1割にも満たないというデータに株価は反応しています。苦しい業界を救うのは手厚い補償金とその使い方です。補償金や給付金を生活補償のためでなくこのような状況に対応できる強いシステムをつくるための投資金として理解できる業界や企業の未来は明るいと思います。

わたくしどもの施設の取り組み

わたくしどもの施設では、従来より、施設内を外部に対して陽圧を保ちながら換気すること、夜間施設内全体を紫外線殺菌すること、個室診療とすること、口腔外バキュームを使用すること、クラスB滅菌機による器具の滅菌をすること等、最新のテクノロジーで施設内の無菌状態を保っております。

診療時間を身体の免疫系の反応が強い時間帯(8:30-17:00)に限らせていただいております。

また、細菌やウイルスは人が運ぶものなので、職員においては体調管理や無菌操作トレーニングを徹底し、患者様においては、エアブローシャワー、手指のアルコール除菌、診療前のクロルヘキシジン洗口にご協力いただいていています。

感染とは、ウイルスや細菌が体内の免疫を超えて増殖することでそれらの暴露が直ちに感染を示すものではありませんが、科学的根拠に基づき院内感染対策に努めております。

コロナ禍においては、これらに加えて、年齢や基礎疾患の有無によってご予約のお時間やご使用いただく待合室を分けさせていただいております。

しかしながらこれらの対策は、通院を促すものではなありません。必要にせまられて通院せざるを得ない方の安全を確保するためのものです。

新年のご挨拶

コロナ禍において、ご自身の体調や行動歴から通院是非の確認のご連絡をいただきます。ご自身のためでなく、わたくしどもスタッフや他の患者様へ迷惑をかけてはならないというご配慮によるものです。

そのような知識と他者への思いやりをお持ちの皆様の治療にあたらせていただけることは、正に歯科医師冥利に尽きる次第でございます。

長くなりました。

本年も治療に全身全霊で取り組む所存です。

よろしくお願い申し上げます。

添田博充 医学博士

医療法人社団添田グループ/ハート歯科

259-1132神奈川県伊勢原市桜台1-11-24