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歯科医師臨床研修施設の選び方 2020年11月20日

当院は厚労省から単独型臨床研修施設に指定されているので、歯学部の学生さん達が見学に来てくれることがあります。その際「研修先はどのように決めるべきか」ということがよく話題になるので、お話ししたことをまとめてみました。学生さん達の進路決定の参考になれば幸いです。

研修施設は4通りに大別できます。

研修先を大別すると、母校、他大学、一般病院の歯科口腔外科、開業医の医院の4通りがあります。それぞれの特徴は次の通りです。

1 母校での研修

母校での研修は、慣れ親しんだ環境で100名程度の研修歯科医の中の一人として、友人、先輩、後輩などの同世代に囲まれて、学生生活の延長として過ごすことができます。症例の数や種類が少なく、患者様からの治療に関する要求も低く、研修医が負うべき社会的責任も小さいので、楽をしようと思えばいくらでも楽をすることができる環境とも言えるし、有り余る時間を自己管理しながら自身のペースで研鑽を積むことができる環境と言うこともできます。大学病院の研修歯科医の平均月給は12万円程度で、自活は不可能ですが、大部分の研修歯科医はこの進路を選択しています。

2 他大学病院での研修

他大学病院での研修は、母校での研修と変わりません。大学によって研修内容に違いがあるということもありません。臨床研修は臨床研修制度によって同一の達成目標が規定されているためです。この進路は地理的理由または人間関係のリセットを理由に選ばれることが多いようです。

3 病院歯科口腔外科での研修

一般病院歯科口腔外科での研修は、大学病院での研修よりも少しエネルギーが必要になるかもしれません。研修歯科医と指導歯科医とがマンツーマン状態となり周りに同世代も少なくなるため、誰かの陰に隠れてやり過ごすことができない環境だからです。もちろんそれを研鑽の機会が多いと考えることもできます。将来的に全身麻酔下での口腔外科手術を限定して行おうと決めている人にとっては、その入り口としては良いと言えます。ただし研修中は、簡単な診療介助と手術の見学に終始し経験できる症例も偏るので、研修中に外科や全身管理の技術が習得できるわけではありませんし見学で得た知識がその後のキャリアで役に立つこともありません。一般病院歯科口腔外科の研修医の平均月給は23万円程度です。

4 開業医の医院での研修

一般開業医の医院での研修は、大学病院や一般病院での研修とは異なり、症例の数や種類が多く、患者様からの治療に関する要求も高く、研修医が負うべき社会的責任も大きいので、治療技術、医院運営、社会性を学ぶ機会に恵まれますが、その分シビアな環境と言えます。ただし、例えば、研修歯科医の治療技術が一定水準に達してから治療を許す施設とそれとは関係なく治療を許す施設があるなど、施設によってモラルレベルや治療レベルが大きく異なるので、自身の希望と鑑みながら施設を選ぶ必要があります。一般開業医の医院の研修医の平均月給は25万円程度です。

大学病院の研修医となり一定期間を開業医に出向する研修

大学病院(管理型臨床研修施設)の研修医となり一定期間を開業医の医院(協力型臨床研修施設)に出向するという研修方法があります。4通りの研修施設の良いところを合わせた研修方法のように見えますが実際はそうではありません。協力型臨床研修施設では、単独型や管理型の指定を持つ施設ほど指導体制が整っておらず、また、研修歯科医を職員ではなく客人として扱わざるを得ないので、研修内容は大学病院の研修と同じかそれ以下になることもあります。

研修先は「施設ではなく指導歯科医で選ぶ」のが良いかもしれない。

つまり、4通りの研修方法にはそれぞれ一長一短があるので、どこで研修をするかということはそれほど重要ではありません。どこに居ても努力の方法を工夫し継続すればある程度の結果は出すことはできます。研修先を決めるうえで大切なことは、自身が理想とする治療を常に目の前で見せてくれる指導歯科医を見つけることです。

人生は自分次第

今、学生さん達にできることは、指導歯科医の治療理念や治療レベルの違いを見極める能力を養うことです。それは日々の臨床実習でインストラクターの治療を注意深く見学することで養うことができます。そうしていれば、はじめは見えなかった違いが見えてくるようになります。それが見えるようになったうえで外部施設の見学をし、見つけた違いについて質問すれば、指導歯科医の治療理念を垣間見ることができます。

頑張ってください。人生はいつも自分次第でどうにでも変えることができます。